「子どもにHour of Codeをやらせたい」と検索してこのページに来た方に、まず結論をお伝えします。Hour of Codeは2026年、Hour of AIという新しい取り組みに引き継がれました。運営元のCode.org自体も、公式サイトで「Code.org has become CodeAI」と明記し、CodeAIへとブランドを変えています。とはいえ「1時間だけ体験してみる」という気軽さや、これまで人気だったコード系のチュートリアルが消えたわけではありません。何が変わり、何が残っているのかを、公式サイトの現物にあたって整理しました。
私がこの改称に気づいたのは、実は自分の子どもの体験がきっかけでした。次女が小学生のころ、近所のショッピングモールで開かれていた無料体験イベントに立ち寄ったことがあります。ブースの一角にノートPCが並んでいて、スタッフの方に「1時間だけ遊んでいきませんか」と声をかけられました。当時、次女がそこで触らせてもらったのが、Hour of Codeのマインクラフト教材です。
特に何かを期待していたわけではなかったのですが、次女は画面の中でキャラクターを動かすブロックを組み替えながら、あっという間に1時間を使い切ってしまいました。帰りの車の中で「あれをもう一回やりたい」と言い出したのが、我が家の自宅学習の始まりです。家に帰ってから一緒にcode.orgを開いたときの様子は、別記事のCode.orgとは?無料で学べるプログラミング学習プラットフォームで詳しく触れていますので、あわせてご覧ください。この記事では、あのとき出会った「Hour of Code」という仕組みそのものが、2026年にどう変わったのかを掘り下げます。
Hour of Codeとはそもそも何だったのか
Hour of Codeは、2013年頃から続けられてきた、誰でも1時間でプログラミングを体験できる世界的なキャンペーンです。学校の授業の一コマ、地域のイベント、あるいは家庭での自習など、さまざまな場所で実施されてきました。年号の細かい経緯までは公式サイトでも詳しく確認できませんでしたが、10年以上にわたって「1時間だけ、誰でも、無料で」というコンセプトを軸に続いてきた取り組みだという点は間違いありません。
日本でも、学校のプログラミング教育の一環や、地域のイベントで実施されるケースがありました。私が次女と出会ったショッピングモールのブースも、そうした草の根の広がりの一つだったのだと思います。ブロックを組み合わせるビジュアルプログラミング形式で、キーボード操作に不慣れな子どもでも直感的に触れられる点が、世界中で支持された理由の一つでしょう。
Hour of AIへ、何が変わったのか
2026年8月時点でhourofcode.comを確認すると、トップページの中心的な打ち出しが「The Hour of AI」に差し替わっていました。公式サイトには「Building on over a decade of success with the Hour of Code, our new global initiative…」という文言があり、Hour of Codeの10年以上の実績を土台にした後継の取り組みであることが明記されています。「first ever Hour of AI」という表現も見られ、これが最初の開催であることが強調されています。変わった点を整理すると、次の4つに集約されます。
- 名称:Hour of CodeからHour of AIへ。運営団体もCode.orgからCodeAIへ改称されました。
- テーマの重心:「コードの書き方を学ぶ」ことから、「AIを理解し、使いこなす力(公式表現では digital fluency)」へと軸足が移っています。
- アクティビティの内容:後述するように、AIの仕組みを体験する新しい教材が中心に据えられています。
- サイトの表記言語:チュートリアル自体は多言語対応をうたっているものの、hourofcode.comのサイト本体は英語のHour of AI版に差し替わっており、案内文や新しいAI系ページは英語であることが多い状態です。
公式サイトが挙げている数字も印象的でした。「生徒の84%がすでにAIを何らかの形で使っているにもかかわらず、全生徒が学校でAIについて学んでいると答えた高校のリーダーはわずか16%」というものです。この数字の大きなギャップこそが、Code.orgがCodeAIへと舵を切った理由なのだろうと感じます。
変わっていないこと
一方で、名前が変わっても中身の骨格までは失われていません。次の点は、Hour of Codeの時代から一貫しています。
- 完全無料であること(非営利団体が寄付とスポンサーで運営)
- 1時間程度で終わる設計であること
- アカウント登録なしでも多くのチュートリアルを試せること
- マインクラフトなど人気の高い教材が引き続き用意されていること
特にマインクラフト系の教材は、Microsoftとの共同制作で従来から続く人気コンテンツです。Minecraft: Voyage AquaticやMinecraft: Hero’s Journeyといった、これまでのHour of Code時代からある教材は今も公開されていて、対象学年(Grades 2-12)やブラウザ・タブレット対応、多言語対応もそのままです。次女が体験したのも、こうした系統の教材だったのだろうと思います。
代表的なHour of AIアクティビティ
公式のParentsページで紹介されている、無料アクティビティ(全体で100種類以上あります)の中から、代表的なものをご紹介します。
Mix & Move with AI(対象:8〜13歳)
体を動かしながら、AIがどうやってパターンを認識するのかを学ぶアクティビティです。座って画面を見るだけでなく、体験的にAIの仕組みに触れられる点が特徴です。
AI for Oceans(対象:7〜11歳)
海に浮かぶごみと生き物を見分けるトレーニングを通じて、機械学習モデルを自分の手で訓練する体験ができます。AIが「学習」するプロセスを、子ども自身が手を動かして体感できる教材です。
Music Lab: Jam Session(対象:8〜14歳)
コードを使って音楽を作るアクティビティです。プログラミングとクリエイティブな表現が結びつく体験として、コーディングに苦手意識のある子にも取り組みやすい内容になっています。
Minecraft Hour of AI: The First Night(対象:Grades 2-12)
マインクラフトの世界で、AIヘルパーに資源の見分け方や道具の作り方、避難所の作り方を「教えて」、最初の夜を生き延びるというアクティビティです。
Minecraft Reed Smart: AI Detective
AIの誤用によって起きた事件を、探偵役として捜査していくミステリー仕立てのアクティビティです。AIを使う上での注意点を、物語を通じて学べる設計になっています。
The First Nightが従来と決定的に違う理由
数あるHour of AIアクティビティの中でも、Minecraft Hour of AI: The First Nightは特に丁寧に紹介したい教材です。というのも、このアクティビティでは、子どもが「教わる側」ではなく「AIに教える側」に回るからです。
ゲームの中で、子どもはAIヘルパーに対して、資源の見分け方や道具の作り方、安全な避難所の作り方を一つひとつ教えていきます。ところが物語の途中で、AIヘルパーが教えたはずのことを忘れてしまう場面が用意されています。ここで子どもは「AIは完璧ではない」「人間が見守り、正しく導いてやる必要がある」ということに、体験を通じて気づく仕組みになっているのです。
これは、ブロックを組み合わせて正解のプログラムを完成させる従来のHour of Codeの体験とは、根本的に方向性が異なります。従来型が「自分がコードを書けるようになる」ことを目指していたのに対し、The First Nightは「AIという道具とどう付き合うか」を体感させる設計です。これこそが、Hour of AIという名称に込められた変化の核心だと感じます。
開催時期はいつ?2026年の日程はまだ未発表
Hour of AIは年間を通じて参加できる取り組みですが、中心となるのはComputer Science Education Week(CSEdWeek)に合わせた実施です。ここで正直にお伝えしておきたいのですが、公式サイトを2026年8月時点で確認したところ、2026年のCSEdWeekの正式日程は「(include dates)」というプレースホルダのままで、まだ公開されていませんでした。
慣例では、CSEdWeekはコンピュータサイエンスの先駆者であるグレース・ホッパーの誕生日である12月9日を含む週に実施されてきました。ただし、これはあくまで過去の慣例であり、2026年の正式な日程は2026年8月時点で公式には未発表です。確実な日程は、時期が近づいたら公式サイトで確認することをおすすめします。
とはいえ、Hour of AIは特定の週だけの限定イベントではなく、年間を通じていつでも参加できる設計になっています。CSEdWeekの日程を待たずに、思い立ったときに始めても問題ありません。
参加方法は3パターン
Hour of AI(および従来からのHour of Code系教材)への参加方法は、大きく3つに分けられます。
- 自宅でブラウザから1時間やってみる:アカウント登録なしで試せるアクティビティが多いので、パソコンかタブレットとインターネット環境があれば、思い立ったその日に始められます。マインクラフト系の教材は、Minecraft Education(教育版)アプリを入れれば誰でも遊べるほか、Microsoft 365アカウントがあればゲーム内のライブラリから直接アクセスすることもできます。
- 学校やイベントで参加する:学校の授業や、地域で開催される体験イベントで実施されるケースです。私の次女がそうだったように、ショッピングモールなどの商業施設で無料体験ブースが設けられることもあります。
- 保護者が主催する:公式サイトには、保護者や教育関係者が自分でHour of AIのイベントを開催できるよう、開催登録の仕組みが用意されています。友人の子ども数人を集めて、自宅で小さな体験会を開くといった使い方もできそうです。
保護者へのアドバイス:まず1時間、で十分
元エンジニアの立場から言うと、Hour of AIのような「1時間で終わる」設計は、プログラミングやAIへの入り口として非常に理にかなっています。何十時間もかけて本格的なコースに取り組む前に、まず子どもがそもそも興味を持つかどうかを、リスクなく確かめられるからです。
もしお子さんがHour of AIで手応えを感じたようなら、そこから先をどう伸ばすかを考えるとよいでしょう。ビジュアルプログラミングの基礎をじっくり固めたいならScratch(スクラッチ)とは?子どものプログラミング入門に最適な理由を、マインクラフトの世界観が気に入ったようならマインクラフトでプログラミングを学ぶ方法を参考にしてみてください。逆に、1時間で満足してしまい、それ以上は特に食いつかなかったとしても、それは失敗ではありません。無理に続けさせる必要はなく、また興味を示したタイミングで戻ってくれば十分だと思います。
教室に通わせるかどうかを考え始めた方には、AIがコードを書く時代、教室に月2万円払う価値はある?もあわせて読んでいただくと、判断の材料になるはずです。
日本の保護者向けの注意点
先ほども触れた通り、hourofcode.comのサイト本体は、2026年8月時点で英語のHour of AI版に差し替わっています。案内文や新しいAI系のページは英語であることが多く、「サイト全体が日本語で読める」と期待すると戸惑うかもしれません。ただし、個々のアクティビティ(教材そのもの)は多言語対応をうたっており、日本語で表示できるものも少なくありません。
英語のサイト構成に身構える必要はなく、まずは案内文を読み込むより先に、実際にアクティビティを開いて子どもと一緒に触ってみるのが早道です。ブロックを組み合わせる操作自体は直感的にできるものが多く、英語が読めなくても進められる場面が大半です。




コメント